万能アロマ「ラベンダー精油」の成分と効能とは?種類やおすすめの使い方。

フルーティーでやわらかいフローラルの香りと、ハーブらしい爽やかさを併せもち多くの人に愛されている「ラベンダー精油」。
心へ、体へ、皮膚へ、さまざまな効能が期待でき、また、『最も有効に作用するハーブ』として、「万能アロマ」とも呼ばれています。アロマテラピーの代表的アロマで、用途が幅広く、アロマテラピーを始める際には、最初に揃えておくと便利な精油のひとつです。
ここでは、ラベンダー精油の成分や効能、種類や手軽に取り入れられる活用法をご紹介します。
ラベンダー精油とは?

ラベンダーは、地中海地域を原産としたシソ科の常緑の亜低木で多年草の植物です。
成長すると90cmほどの丈に成長し、緑色の葉に紫色の小さな穂状の花をつけます。精油は、この花から水蒸気蒸留法によって抽出します。
心身に多くの作用をもたらすとされ、古くから多くの地域で重用されてきました。
学名の『Lavandula』は、ラテン語で『Lavo(洗う)』から由来していると言われ、由来通り、ローマ人は洗濯や浴用に使用したといいます。
ラベンダーの原産地は地中海や中東、インドとされ、地中海地域の山岳地帯には、ラベンダーが自生しています。
現在ラベンダーは世界中で栽培され、フランスやブルガリア、オーストラリア、スペイン、オランダなど他にもたくさんの国で栽培が盛んに行われています。
なかでも、古くからラベンダー栽培が盛んだったフランスのプロヴァンス産のラベンダー精油は、とくに珍重されています。
日本では富良野で1937年からラベンダー栽培が始まりました。一時期、合成香料の発達で栽培が廃れかけましたが、ラベンダー畑の美しさが再注目され、富良野には再びラベンダー畑が広がり、現在も精油が作られています。
ラベンダー精油は、フローラル調のフレッシュな香りで、アロマテラピーの代表的な香りとして一番用途が広く使われるため「万能精油」とも言われています。リラックス効果が高く、ストレスの緩和や快眠にとても効果的とされ、マッサージ、バスオイル、芳香浴、湿布、吸入など様々な用途に使用されています。
ラベンダーの歴史
ラベンダーは、古代ギリシャ・ローマ時代から、お風呂や寝室、衣服、さらに髪の香り付けに使用し、公衆浴場でもラベンダーの香りは活用されていたといわれ、また、古代エジプトでは、ミイラの防腐処理にも使用したとされています。
930年代のフランスでは、科学者ルネ・モーリス・ガットフォセが火傷の治療にラベンダー精油を使い、火傷の治りを早めるのを発見し、ラベンダー精油の効能が再び注目されました。
治療のための消毒剤が不足していた第一次世界大戦中には、傷や火傷の治療に使用されていました。
ガットフォセは後に、精油の利用法について本を著し、『アロマテラピー』と言う言葉を広め、やがて後世で"アロマテラピーの父"と呼ばれるようになりました。
戦後にはフランスとイギリスでアロマテラピーが発展し、ラベンダーのさまざまな働きが見直されました。
そして現代でも、さまざまな研究からアロマテラピーによってより手軽に用いられるようになり、ラベンダー精油は癒やしの香りとして、多くの人に愛され続けています。
ラベンダー精油の香り
ラベンダーは、少しフルーティーでやわらかいフローラルの香りと、ハーブらしい爽やかさを併せもつ香りです。
ノートは、ミドルです。
ラベンダー精油の種類

ラベンダーには多くの種類があり、主な栽培種だけで20種類はあります。
ここでは、精油によく使われるラベンダー4種類を紹介します。
真正ラベンダー
学名は「Lavandula angustifolia」です。
別名は、ラベンダー・フランス、トゥルーラベンダー、イングリッシュラベンダー、コモンラベンダーと呼ばれています。
一般的にラベンダーというと、真正ラベンダーのことを指し、最も香りが優れています。
夏は暑く、冬は寒い標高の高い地域で育つものがより高品質なものを産み出すとされています。
モノテルペンアルコール類のリナロールとエステル類の酢酸リナリルを豊富に含み、心身の鎮静、鎮痛、炎症の緩和やリラックス効果に優れています。
※低血圧の人は眠気やだるさを感じることがあるので、使用や使用量に注意が必要です。
スパイクラベンダー
学名は「Lavandula latifolia」です。
真正ラベンダーよりも大きな株で育ち、茎が3つに分かれて花をつけることから【スパイク】という名前がつけれています。
酢酸リナリル、リナロールのほかにケトン類のカンファーを含み、すっきりとしたシャープな香りが特徴で、フローラルさよりも爽やかなハーブの印象が強いため「男性のラベンダー」と呼ばれています。
鎮静よりも刺激の作用があり、呼吸器系や皮膚の再生などを得意としています。
心への作用も、鎮静よりも刺激に働きかけ、脳の活性化を促します。リラックスよりもリフレッシュしたいときにおすすめです。
※ケトン類のボルネオンが含まれているので、妊娠中や授乳中、てんかんの方、高齢者、乳幼児の使用は避ける必要があります。
ストエカスラベンダー
学名は「Lavandula stoechas」です。
別名、フレンチラベンダーとも言われ、ウサギの耳に似た可愛らしい花を咲かせます。
ミント調のスッキリとした香りが特徴なシソ科の常緑多年草で、真正ラベンダーのフローラルな香りとは違ったフレッシュな香りが特徴です。
ケトン類のカンファーや、フェンコンを多く含み、去痰作用や、抗菌、殺菌、防虫などの作用を得意とします。
※刺激のあるカンファーを含むので妊娠中や授乳中、乳幼児の使用は控える必要があります。
ラバンジン
ラバンジンは、真正ラベンダーとスパイクラベンダーの交配種で、学名は「Lavandula X intermedia」です。
ラバンジンスーパーと呼ばれることもあります。
ミツバチの自然交配によって生まれた品種で、フランスを主な産地としています。生育地域の適応力が強く精油が多く取れるので、ラベンダー精油としては比較的安価で流通量が多いです。
香りは、スパイクラベンダーの爽やかさと真正ラベンダーのフローラルさがあります。
酢酸リナリルとリナロール、ケトン類のボルネオンを含み、心身への働きも真正ラベンダーとスパイクラベンダーの両方の特徴を併せ持ち、鎮静作用と呼吸器障害や脳の活性化などを得意とします。
スパイクラベンダーよりも『ケトン類』ボルネオンの含有は少なく、鎮痛、抗炎症などの作用はあり、真正ラベンダーほどの眠気も催さず使用できます。
※スパイクラベンダーほど多くはないですが『ケトン類』のボルネオンが含まれており妊娠中、授乳中、てんかんの方、高齢者、乳幼児の使用は念の為避ける必要があります。
ラベンダー精油の成分・効能

ラベンダー精油の主成分は、フレッシュで少しフルーティー感のある酢酸リナリルと、さわやかでフローラル感のあるリナロールという香り成分などです。
これらの成分には、抗炎症や抗菌、鎮痛、鎮静といった作用があり、高ぶった神経や気持ちを鎮めリラックスさせてくれます。また、フルーティーな香りは幸福感をもたらしてくれ、気分を前向きにしてくれます。
ラベンダー精油の効能をくわしくみてみましょう。
リラックス効果
ラベンダー精油には、心を落ち着かせる鎮静作用をもつ成分である酢酸リナリルやリナロールを豊富に含み、心身のリラックス作用に優れ、ストレスによる緊張や不安、怒りを和らげ、安定した精神状態へと導くはたらきがあります。
参考:「ラベンダーの香りと神経機能に関する文献的研究」関西医療大学
安眠効果
ラベンダー精油には、副交感神経を優位にしリラックスさせるはたらきがあるほか、気分を安定させるセロトニンや、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌を促すはたらきがあり、心身をリラックスさせ安眠へと導く作用があります。
参考:「ラベンダーの香りがストレス負荷時の睡眠中の自律神経活動に及ぼす影響」富士山研究第6巻(2012)
頭痛の緩和
ラベンダー精油に含まれる酢酸リナリルには鎮静作用があり、頭痛や生理痛、胃痛などを和らげるはたらきがあるとされています。
不安抑制
ラベンダー精油に含まれるリナロールには抗不安作用があり、ラベンダーの香りを嗅ぐことで不安を減らす効果があるとされています。
抗不安薬の多くは、鎮静作用や運動抑制が強すぎる傾向がありますが、リナロールを嗅ぐ場合は、それらの作用が起こらないとされ、抗不安薬の代わりとして用いられるのが期待されています。
参考:「リナロール香気の抗不安作用と中枢神経回路基盤の解明」KAKEN 科学研究費助成事業データベース
ストレス緩和
ラベンダー精油に含まれる酢酸リナリルには抗ストレス作用があり、ラベンダーの香りを嗅ぐことでストレスが減少する効果があるとされています。
参考:「ラベンダーの香りがストレス負荷時の睡眠中の自律神経活動に及ぼす影響」富士山研究第6巻(2012)
PMS(月経前症候群)の緩和
ラベンダーの香りには、副交感神経を優位にする作用があり、PMS(月経前症候群)を和らげるのに役立つとされています。
また、ホルモンバランスを調整するはたらきもあり、更年期や婦人科系の不調、生理痛などホルモンバランスの乱れが原因の不調にも作用してくれます。鎮静、鎮痛作用もあるので、痛みやイライラなども鎮めてくれる効果が期待できます。
参考:「女性頭痛患者に対するアロマテラピーの有効性に関する研究」科学研究費助成事業データベース
皮膚トラブルの緩和
ラベンダー精油は、美容にも良い効果が期待できるとされています。
ニキビや肌の炎症、かゆみなどを緩和する効果や、軽いやけど、虫刺され、水虫、あせもなどの皮膚トラブルに対しても優れた効果が期待できるとされています。
美肌効果
ラベンダー精油は、古くから美容に用いられてきました。
細胞の活性化や抗炎症作用も期待でき、くすみやしみ、しわの予防などエイジングケアに効果が期待できるとされています。
リラックス効果もあるので、ストレスによる肌トラブルにも働きかけてくれます。
花粉症・アレルギー症状の緩和
ラベンダーには、抗炎症作用や抗菌作用、鎮静、鎮痛作用、免疫刺激作用があることから、風邪や花粉症、菌やウイルスによる呼吸器系のトラブルにもはたらきかけてくれます。
炎症を抑え、喉や鼻の不快感を和らげると共に、免疫力を高め症状を緩和し、予防するとされ、免疫が高まることでアレルギー症状の緩和にも繋がります。
ラベンダー精油のおすすめの使い方

手軽に取り入れられるラベンダー精油の使い方をご紹介します。
芳香浴
ラベンダーの香りを部屋中に香らせたい時は、アロマディフューザーやアロマランプを使ってみましょう。
また、寝る前にリラックスしたい時は、畳んだティッシュや化粧用コットンに1、2滴垂らして、枕のそばに置いておくだけで十分に香りを楽しむことができます。
アロマスプレー
ラベンダー精油でアロマスプレーを作ってみましょう。
ニオイが気になるトイレや玄関などの消臭、クローゼットの芳香、また、香りの良いピローミストやマスクスプレーとしても使うことができます。
〈作り方〉
1.スプレー容器に無水エタノール5mlを入れ、精油6滴を加えよく振って混ぜる
2.精製水25mlを加え、フタをしてよく振って混ぜる
オレンジスイートやベルガモット、ゼラニウムやカモミールなどお好みの精油とブレンドするのもおすすめです。
※使用する際は、毎回容器を良く振ってからお使いください。
※高温多湿を避け冷暗所で保管し、2週間を目安にできるだけ早めに使い切ってください。
スキンケア・ボディーケア
肌荒れやニキビなどには、ラベンダー精油を使って化粧水やアロマオイルを作ってみましょう。
アロマオイルはマッサージオイルとしても使用でき、スキンケアや筋肉の緊張をほぐすのに役立ちます。
〈化粧水作り方〉
1.エタノール5mlにラベンダー精油1滴を溶かし、グリセリン5mlと精製水40mlを加えてよく混ぜる
〈アロマオイルの作り方〉
1.ホホバオイルなどのキャリアオイル10mlにラベンダーオイル1~2滴(濃度0.5~1.0%)を混ぜる
※顔へ使用する場合は濃度0.5%以下で使用しましょう。
アロマ温湿布
肩こりや腰痛、生理痛に、ラベンダー精油を使って温湿布がおすすめです。
〈使い方〉
1.洗面器に半分くらいお湯を入れ、精油1~3滴を加える
2.タオルを浸しお湯をすく取るようにして精油を付着させる
3.精油がついた面を内側にたたんで水気をしっかり絞る
4.精油が肌に直接つかないよう気をつけながら、肩や腰、お腹など気になる部位に温湿布します。
※精油は水に溶けにくいため、皮膚に直接触れないよう注意してください。
ラベンダー精油と相性の良い精油

ラベンダー精油は、ほとんどの精油と相性が良く、ブレンドが上手くいかない時にラベンダー精油を少量入れると全体をまとめ、調和してくれます。
精油を数種類ブレンドすることで、それぞれの効能の相乗効果が期待できます。
お悩み別でおすすめのブレンド精油をご紹介します。
【リラックス】
・オレンジスイート
・ゼラニウム
・マジョラム
【不眠】
・オレンジスイート
・カモミール
・ベルガモット
【肩こり】
・ローズマリー
・ペパーミント
・レモングラス
【花粉症】
・ペパーミント
・ユーカリ
・レモン
【風邪】
・ティーツリー
・ユーカリ
・レモン
【冷え症】
・サンダルウッド
・レモン
・ローズマリー
【美肌】
・ネロリ
【かゆみ】
・カモミール
【日焼け】
・カモミール
・ローズ
【虫刺され・ニキビ・水虫】
・ティーツリー
【生理痛・PMS】
・カモミール
・クラリセージ
【空気清浄】
・サイプレス
・ユーカリ
・レモン
【除菌】
・ティーツリー
・ペパーミント
色々な精油とブレンドしてみてください。
ラベンダー精油を使う際の注意点

ラベンダー精油は比較的安全な精油ですが、妊娠中や授乳中の方は控えた方がよい種類もあります。
また、精油の中でも肌に優しい精油ですが、薄めていない精油を肌に直接塗布するのは控えましょう。
まとめ
ラベンダー精油には、抗うつや安眠などの心への効能、鎮痛や肩こりなど体への効能、そしてニキビやエイジングケアなど肌への効能など、さまざまな効能があります。
ラベンダー精油は多くの精油と調和するので、気分や目的に合わせてお好みの精油とブレンドして、自分だけのとっておきアロマを楽しんでみてください。