カカオの品種と産地の違いとは?世界三大カカオの特徴とチョコレートの選び方
チョコレートの原料であるカカオは、品種や産地、発酵方法によって香り・苦味・酸味・コクが大きく異なる食材です。
ワインやコーヒーと同じように、カカオにも「テロワール(風土)」があり、どこで、どの品種が育ったかによって、味わいは驚くほど変わります。
ここでは、世界三大カカオ品種( クリオロ・フォラステロ・トリニタリオ )の違いをはじめ、産地別の特徴や、初心者から通の方まで自分に合ったカカオの選び方をご紹介します。
カカオの品種とは?
チョコレートの原料であるカカオ豆には、いくつかの品種があります。
どのような食材でもそうですが、「品種」はその食材の価値をはかるひとつの指標であり、個性となります。
この品種の違いによって、香り・酸味・苦味・コクに違いがでます。
チョコレートメーカーは製品ごとにカカオ豆を選択し、いくつかの豆をブレンドしてチョコレートの特徴を出すことが多いようです。
また、近年は、カカオの品種や産地を明記するチョコレートも増えています。
カカオ豆の生産国
カカオの樹は、赤道を挟んで北緯20度から南緯20度の高温多湿の熱帯でしか生育せず、この栽培適地を「カカオベルト」と呼びます。さらに、この地域の高度30~300m、年間平均気温が27°Cで気温差が小さく、年間降雨量は最低1000ml以上などの条件がそろった地域でしか育たないといわれています。主な生産地は、中南米、西アフリカ、東南アジアで、その中でもアフリカが生産量の80%近くを占めています。
国際連合食糧農業機関によると、2023年において世界でカカオ豆の生産量が多い国は、1位コートジボワール、2位ガーナ、3位インドネシア、4位以降は同じくらいの生産量となるエクアドル、ブラジル、カメルーンなどが続いています。
★参考:WORLD GUIDE 「世界のカカオ豆生産量ランキング【1961〜2023】国別推移・年間比較データ」
世界三大カカオ品種の特徴
世界で主に流通しているカカオは、「クリオロ種」「ファラステロ種」「トリニタリオ種」の大きく3つの品種に分類されます。
それぞれに味わいや香りに違いがあります。
※エクアドル産特有の品種にアリバ種(ナシオナル種)があります。エクアドル特有の環境に適応して変異した品種で、他国での栽培が不可能とされており、世界のカカオ生産量の約2%しか存在しないとも言われています。
クリオロ種(Criollo)
クリオロとは、スペイン語で「自国のもの」、「その地域で生まれたもの」という意味を持ちます。カカオ豆を初めてヨーロッパに輸出した際、そのカカオを「クリオロ(自国のもの)」と呼んだことが始まりであると一説ではいわれています。
原産地は南米(アマゾン川流域地帯)とされていますが、歴史的にはメソアメリカと呼ばれる中米で栽培されていた記録が残っているため、原産地は中米とされることもあります。
現在はベネズエラやメキシコなど限られた地域で栽培されており、生産量は全体の約1%未満という、非常に希少な品種です。
苦味が少なく、フルーティーで華やかな香りが特徴。その良質な風味からフレバービーンズ(風味をプラスする豆)とも呼ばれています。
口どけが良く、雑味が少ないため、繊細な味わいのチョコレートに仕上がります。
一方で、病害に弱く栽培が難しいため、高級チョコレートに使用されることが多い品種です。
世界でも生産量の極めて少ない「ホワイトカカオ」はこのクリオロの一種なのですが、とても貴重で幻のカカオとも評されています。
ファラステロ種(Forastero)
フォラステロとは、スペイン語で「よそ者」、「よその土地の者」という意味を持ちます。アマゾン川流域、ベネズエラのオリノコ川流域などが原産で、現在は、ガーナやコートジボワールなど西アフリカ、東南アジアなどで栽培されています。世界のカカオ生産量の約80%を占める、最も一般的な品種です。
しっかりとした渋みと苦味、力強いカカオ感があるのも特徴です。
病害に強く安定した収穫ができるため、大量生産向きとされています。
チョコレートのベースやブレンドに欠かせないベースビーンズとして、一般的なチョコレートや加工用原料に幅広く使用されています。
トリニタリオ種 (Trinitario)
トリニタリオ種は、カリブ海のトリニダード島で誕生したことが名前の由来です。現在は、ドミニカ共和国など中南米や南米で栽培されています。
クリオロ種とファラステロ種の自然交配でできた品種とされ、2種の中間的な性質を持ちます。生産量は全体の約15~20%で、力強いものから繊細なものまで、味や香りは個性的で豊かな味わいです。
ブレンド豆として重宝されています。
【産地別】カカオ豆の特徴
カカオ豆は、気候・土壌・発酵方法の違いにより、味わいが変わります。同じ品種でも、「エクアドル→フローラル」「ガーナ→力強いカカオ感」と個性が変わるのは、このテロワールが理由です。
ここでは、世界的に評価の高い主要産地ごとのカカオ豆の特徴を紹介します。
※テロワール(Terroir)とは「土地の個性」を指す言葉。ワイン業界で使われますが、カカオにも同じように使用する用語です。
コートジボワール(アフリカ)
コートジボワールは、世界最大のカカオ豆生産国です。
ほぼ100%ファラステロ種で、カカオらしいコクと深み、しっかりとした苦みが特徴です。
品質が安定しており、業務用チョコレートやブレンド用として使用されることが多いです。
ガーナ(アフリカ)
ガーナ産は、主にファラステロ種です。チョコレートらしい香ばしさとコクがあり、苦味と酸味のバランスが良く、クセが少ないのが特徴です。
市販の板チョコにもよく使われており、多くの人に親しまれているスタンダードな産地です。
インドネシア(東南アジア)
インドネシア産は、主にファラステロ種で、生産地域や発酵方法などで、草や木を燻したような力強い香りだったり、香ばしいロースト感、酸味と果実味があるさわやかな味わいなど、個性的な特徴があります。
「フルーティーでフローラル、時にハーバルやウッディな風味もあり、全体としてバランスが良い」と評価されており、この豊かな風味こそが、インドネシアカカオの魅力です。
エクアドル(南米)
エクアドルは、ファラステロ種から派生したアリバ種(ナシオナル)と呼ばれる品種の産地です。
アリバ種は、独特の風味があり、ジャスミンのようといわれることもあるフローラルな香りと強いカカオ感、後味に残る適度な渋みが特徴です。
上品でエレガントな香りを持ち、シングルオリジンチョコレートとして高い評価を受けています。
「アロマチョコレート」と呼ばれるほど、エクアドル産は香りの個性が豊かな産地として有名です。
ベトナム(東南アジア)
ベトナム産カカオは、主にトリニタリオ種が栽培されており、
ベリーを思わせるフルーティな酸味に、ナッツのようなコク、ほのかにスパイシーな余韻が感じられるのが特徴です。
世界全体の生産量に占める割合はごくわずかで、量は多くありませんが、その個性的な風味と品質の高さから、近年注目を集めています。
特に、国際的なチョコレート品評会でベトナム産カカオを使用したチョコレートが評価されたことをきっかけに、世界的な認知が広がりました。
現在では、オランダやベルギー、フランスなどのチョコレート文化の成熟した国々の企業が、原料調達や加工の拠点としてベトナムに注目するなど、
ベトナム産カカオは「新しい産地の高品質カカオ」として評価を高めています。
マダガスカル(アフリカ)
マダガスカル産は、シトラスやベリーのようなフルーティーな酸味と香りが特徴です。特に、「サンビラノ渓谷」で育ったカカオは、ラズベリーやレモンを思わせるような酸味があります。
フルーツのような香りが感じられる華やかさを持ったマダガスカル産のカカオは、その独特の味わいから世界中のチョコレートメーカーに高く評価されています。
ペルー(南米)
ペルーは、世界的に評価の高いカカオの産地として知られています。
近年では、ペルー産カカオを使用したチョコレートが国際的な品評会で評価される機会も増え、その品質の高さが注目されています。
一般的なファラステロ種や、クリオロ種の遺伝子を受け継ぐ在来種や交雑種が多く栽培されているのが特徴です。
そのため、産地ならではの個性豊かな香りと味わいを持つカカオが生まれています。
風味は、りんごやベリーのドライフルーツを思わせる爽やかな甘酸っぱさに、ジャスミンのような華やかさ、紅茶のようにやさしく上品な香りが重なり、ほどよいカカオ感とともに奥行きのある複雑な味わいが楽しめます。
こうした特徴から、ペルー産カカオは素材の個性を活かした高品質なシングルオリジンチョコレートによく使用されています。
ドミニカ共和国(中南米)
ドミニカ共和国産のカカオは、生産されるカカオの約70%がオーガニックという、世界的にも高い品質を誇ります。
味わいはナッツのような香ばしさと、ほんのり感じるやさしい酸味が特徴で、クリーミーでなめらかな口どけが楽しめます。
クセが少なく、ビターなチョコレートが苦手な方でも比較的食べやすい、バランスのとれた風味です。
その安定した品質から、クラフトチョコレートによく使用されています。
【好み別】おすすめのカカオ産地
ここでは、好みやシーン別におすすめのカカオ産地を紹介します。
【バランスの良いチョコレートらしい味が好みの人】
クセが少なく、カカオらしいバランスの良さを求める方には、「ガーナ産」のカカオがおすすめです。
苦味・酸味・コクのバランスが良く、「チョコレートらしい味」を安心して楽しめます。
毎日のおやつや、家族みんなで食べるチョコレートにも向いています。
【濃厚で力強いカカオ感を求める人】
しっかりとしたコクと苦味を楽しみたい方には、「コートジボワール産」が向いています。
王道のカカオ感があり、「チョコレートは濃くてこそ」という方に好まれる味わいです。
ドリンクや焼き菓子など、カカオの存在感を出したい用途にもおすすめです。
【香りを重視したい人】
香りの華やかさを楽しみたい方には、「エクアドル産」のカカオがおすすめです。
ジャスミンを思わせるフローラルなアロマが特徴で、ワインや紅茶が好きな方、香りの余韻を楽しみたい方に向いています。
シングルオリジンチョコレートを試したい方にもおすすめです。
【個性的な味わいを楽しみたい人】
フルーティさやスパイス感など、一味違うチョコレート体験を求める方には、「ベトナム産」のカカオがおすすめです。
明るい酸味と軽やかなスパイス感があり、甘すぎない大人向けの味わいが楽しめます。
【ビターで香ばしい味が好きな人】
酸味が控えめで、ナッツやローストを思わせる香ばしさを好む方には、「インドネシア産」がおすすめです。
コーヒーとの相性が良く、焼き菓子やココアドリンクにも使いやすいカカオです。
【フルーツのような酸味が好きな人】
ベリーのようなはっきりとした酸味を楽しみたい方には、「マダガスカル産」のカカオがおすすめです。
個性が非常に強いため好みは分かれますが、カカオのテロワールを楽しみたい方には高く評価されています。
【複雑で奥行きのある香りを楽しみたい人】
香りの層の重なりや、奥行きのある味わいを求める方には、「ペルー産」のカカオがおすすめです。
希少品種が多く、カカオそのものの魅力を深く味わいたい方におすすめです。
【食べやすさ重視な人】
ビターが苦手だけれど、上質なカカオを楽しみたい方には「ドミニカ共和国産」がおすすめです。
ナッツ感とまろやかさのバランスが良く、オーガニック認証を受けているカカオ豆が多く、オーガニック志向の方に選ばれています。
初心者向け/通向け カカオの選び方ガイド
ここでは、カカオ初心者の方から、すでにカカオを楽しんでいる“通”の方まで、選び方のポイントを解説します。
◎カカオ初心者向け|まずは「食べやすさ」を基準に
カカオ初心者の方にとって大切なのは、苦すぎない・酸っぱすぎない・クセが強すぎないことです。
〈初心者におすすめの選び方ポイント〉
・味のバランスが良い
・香りが強すぎず、親しみやすい
・「チョコレートらしさ」を感じやすい
この条件に合うのが、「ガーナ」や「コートジボワール」産のカカオです。
これらの産地は、苦味・酸味・コクのバランスが良く、「思っていたより苦い…」といった失敗が起こりにくいです。
◎少し慣れてきた方向け|「香り」や「余韻」を楽しむ
カカオの苦味に慣れてきたら、次は香りの違いに注目してみましょう。
・花のような香りを楽しみたい
・ワインや紅茶が好き
・チョコレートに上品さを求める
このタイプの方には、「エクアドル」産のカカオがおすすめです。
フローラルなアロマが特徴で、「香りを楽しむチョコレート」という新しい魅力が発見できます。
◎カカオ通向け|「酸味・個性・テロワール」で選ぶ
すでにビターチョコや純ココアに慣れている方は、「産地ごとの個性(テロワール)」を楽しんでみましょう。
〈通向けの選び方ポイント〉
・フルーツのような酸味を楽しめる
・味の変化や複雑さを感じたい
・「好みが分かれる味」も面白い
この層におすすめなのが、以下の産地です。
●マダガスカル
→ ベリーのような鮮烈な酸味。
フルーツ系チョコが好きな方に。
●ベトナム
→ フルーティさとスパイス感が共存。
新しい味の発見を楽しみたい方向け。
●ペルー
→ 希少品種由来の複雑で奥行きのある香り。
素材そのものを味わいたいカカオ通に。
◎さらに深く楽しみたい人|用途で選ぶ
用途別に産地を選ぶのも、通な楽しみ方です。
〈用途別おすすめ産地〉
・ココアドリンク → ガーナ、コートジボワール
・焼き菓子 → インドネシア(香ばしさ重視)
・シングルオリジンで味わう → エクアドル、ペルー、マダガスカル
※シングルオリジンとは、ひとつの原産国・生産地のカカオだけを使ったチョコレートのことで、産地ごとの香りや個性をそのまま楽しめます。多くのチョコレートは、味を安定させるためにブレンドされています。
カカオの品種とカカオ含有量(%)の関係
チョコレート選びでは「カカオ〇%」という表示が注目されがちですが、同じカカオ含有量でも、品種が違えば味の印象は大きく変わります。
「高カカオ=苦い」とは限らず、品種によってはまろやかに感じる場合もあります。
品種とカカオ%をあわせて見ることで、より自分好みのチョコレートを選びやすくなります。
チョコレートを選ぶ際のポイント
チョコレートを選ぶ際は、カカオ含有量だけでなく、使用されているカカオの品種や産地に注目するとよいでしょう。また、香料や過度な加工が少ないものを選ぶことや、カカオ豆本来の風味を活かした製法かどうかも意識して選ぶとよいでしょう。
まとめ
カカオは、品種や産地、育った土地の環境(テロワール)によって、香りや味わいが大きく変わる奥深い食材です。
同じチョコレートでも、使われるカカオが違えば、感じ方はまったく異なります。
世界三大カカオ品種である
クリオロ・ファラステロ・トリニタリオ
それぞれに個性があり、さらに産地ごとの特徴が加わることで、多彩な味わいが生まれます。
チョコレートを選ぶ際は、カカオ含有量だけでなく、品種や産地にも注目してみましょう。
自分の好みに合ったカカオを知ることで、チョコレートの楽しみ方はより深く、豊かなものになります。