「大納言小豆」と普通の「小豆」の違いとは?特徴や栄養、レシピも。
「大納言小豆」は、小豆の品種のひとつで、最高級品とされています。
小豆のなかでも粒が大きい品種が大納言小豆に分類され、北海道産が有名です。
ふっくらとして色つやがよく、煮ても皮が破れにくいのが特徴の大納言小豆は、粒あんやぜんざい、おしるこ、赤飯やおはぎなどに向いており、京菓子の材料としても使われています。
ここでは、大納言小豆の栄養や効果、普通の小豆との違いや応用のきく粒あんのつくり方などをご紹介します。
大納言小豆とは・特徴
大納言小豆(読み方:ダイナゴンアズキ)とは、小豆の品種のひとつで、小豆の中でも粒が大きい品種のことをいいます。直径5.5mm以上ある小豆が大納言小豆に分類されます。
北海道産の「アカネダイナゴン」「ほくと大納言」「とよみ大納言」「ほまれ大納言」や兵庫県産の「丹波大納言」「美方大納言」、京都府産の「馬路大納言」などがあります。
大納言小豆は小豆に比べ、ふっくらとして色の赤みも強くつやがあります。食感やしっかりしとした香りが魅力です。
皮が丈夫で、長時間煮ても破れず煮崩れないという特徴があり、これがクリアしてないと大粒でも大納言小豆には分類されません。
これが、大納言小豆が最高級品とされている理由です。
大納言小豆の名前の由来
大納言小豆の名前の由来は諸説あります。
最も有力な説は、
『大納言小豆は、煮ても皮が破れる「腹割れ」が起こりにくい特徴を持った大粒の小豆なので、武士のような切腹の習慣のない公卿(クギョウ)の官職である‘’大納言‘’という名がつけられた』
といわれています。
その他には、大納言が被る烏帽子(えぼし)と大納言小豆の形が似ているからという説もあります。
‘’大納言小豆‘’と普通の‘’小豆‘’の違いは?
大納言小豆も小豆も同じマメ科ササゲ属で、直径5.5mm以上の大粒の品種を‘’大納言小豆‘’、それ以外を普通の‘’小豆‘’と分類します。
皮が丈夫な大納言小豆はぜんざいや甘納豆、つぶあんに使い、普通の小豆は、こしあんや、大福やお饅頭などの和菓子用のあんに向いています。
このようにそれぞれの特性を活かして使い分けます。
大納言小豆の栄養・効果
大納言小豆は食品成分表でもアズキの中に含まれています。小豆は古くから漢方薬に使用されていた程栄養価の高い食品です。
小豆は、食物繊維やたんぱく質、ビタミンB群、カリウム・カルシウム・リン・鉄・亜鉛などのミネラルやポリフェノールなどさまざまな栄養素がバランスよく含まれています。
その中でも、大納言小豆は皮が丈夫なため食物繊維が多く含まれています。
また、不足傾向にあるミネラル類をまとめて摂取できる優れた食品です。
詳しくみてみましょう。
★参考:国立情報学研究所 名古屋経済大学 自然科学研究会 ISSN 1348-8058 「あずきの歴史と栄養」
たんぱく質[脂肪燃焼・基礎代謝アップ効果]
たんぱく質は、食べると消化されてアミノ酸に分解し、体内に入って再び合成され、筋肉や内臓、皮フ等を造ります。
また、食事をエネルギーに変換する働きがあり、脂肪燃焼や基礎代謝の維持にも大きな役割を果たしています。
アミノ酸には、体内でほとんど合成できないアミノ酸があり(必須アミノ酸) 、必ず食品から摂取しなければなりません。 必須アミノ酸は、1種類でも一定量に満たないものがあると、体内でのたんぱく質合成が十分に行えなくなります。
たんぱく質は、必須アミノ酸の種類と量のバランスが重要です。例えば、豆類には、必須アミノ酸のリジンやスレオニンが豊富に含まれていますが、これらのアミノ酸は、白米には不足しています。米と豆類を一緒に食べると必須アミノ酸のバランスがよくなり、たんぱく質を効率的に摂取することができます。つまり赤飯や豆ごはんなど、米と豆を使った料理は、栄養学的にも優れているということです。
食物繊維[便秘の改善・デトックス効果]
小豆には、ごぼうの約2倍、さつまいもの約3倍の食物繊維が含まれています。
食物繊維には不溶性と水溶性があり、不溶性は、咀嚼回数が増加するため、食べ過ぎを防止し、また胃に長い時間留まることから満腹感を感じやすくなります。
また体内で水分を吸収して便を増やし、腸を刺激してぜん動運動を活発にし便通をスムーズにするので、便秘の予防や改善に役立ちます。
さらに腸内の有害物質の排出を促すデトックス効果もあります。
水溶性は、糖の吸収速度を遅らせる効果があり、食後の血糖値の急激な上昇とインスリンの過剰分泌を防ぎます。さらにコレステロールや胆汁酸の吸収を抑制し、血中コレステロールを低下させ、動脈硬化を予防する効果があると言われています。
ポリフェノール[エイジングケア・生活習慣病予防]
小豆には、アントシアニン・イソフラボン・ルチン・レスベラトロール・カテキンなどエイジングケアに効果的なポリフェノールが豊富に含まれています。
〖アントシアニン〗
小豆の皮に多く含まれ、メラニン色素の生成を促します。美白やシミ予防に効果的とされています。
〖イソフラボン〗
胚芽部分に多く含まれ、女性ホルモンと似た働きをします。更年期障害や骨粗しょう症予防に効果的とされています。
〖ルチン〗
体内のコラーゲンの合成を促す働きや、毛細血管を強くする働きがあります。血流を促し、脳卒中などの予防に効果が期待できます。
〖レスベラトロール〗
細胞の酸化を防ぎ、お肌の弾力を改善する働きがあるといわれています。血流の働きを良くし、生活習慣病予防にも効果的とされています。
〖カテキン〗
小豆の苦味成分です。抗菌や血中コレステロール値を下げる効果や、体脂肪を減少させる働きがあるとされています。
サポニン[ダイエット・免疫力を高める効果]
小豆を煮ると水に消えない泡が出てきますが、それがサポニンです。ポリフェノールと同様、抗酸化作用があり活性酸素を除去してくれます。サポニンには余分な脂肪の蓄積を防ぐ働きがあり、ダイエットやむくみ改善に効果が期待できます。
また、免疫力を高める働きもあります。
カリウム[高血圧予防]
カリウムは、細胞の浸透圧を維持しているほか、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節などの働きをするなど、生命を維持する上で重要な役割をしています。
また、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄を促進するため、血圧を下げる効果があります。
鉄[貧血予防]
鉄は、赤血球のヘモグロビンの構成成分となり、酸素の運搬という重要な役割をしています。筋肉中に含まれるミオグロビンの成分であり、血液中の酸素を筋肉に取り入れる役割もしています。
鉄が不足すると、貧血の症状が現れるほか、神経過敏、集中力や思考力の低下の原因にもなります。
鉄の体内での吸収率は極めて低いために欠乏しやすいです。貧血気味の人や成長期の子どもの成長に見合う鉄が摂れないと欠乏状態になりやすくなるので、積極的に鉄を摂取し、貧血予防に心がける必要があります。
ビタミンB1[疲労回復効果]
ビタミンB1は、疲労回復のビタミンともいわれ、糖質を分解してエネルギーを発生させる際の補酵素の役割をしています。
エネルギーをつくる手助けをしてることで、神経や筋肉の機能を正常に保つ働きがあります。
ビタミンB1が不足すると、十分にエネルギーを産生できなくなり、食欲不振、疲労、だるさなどの症状が現れます。また、脳はブドウ糖をエネルギー源としているため、ビタミンB1が不足するとエネルギーが不足し、脳や神経に障害を起こすこともあります。
大納言小豆の品種・産地
大納言小豆の生産地と品種、栽培面積が一番多いのは北海道で「アカネダイナゴン」「ほくと大納言」「とよみ大納言」、兵庫県の「丹羽大納言」などの品種があります。
・北海道産【アカネダイナゴン】
昭和35年に北海道立農業試験場十勝支場で「能登小豆」と「早生大粒1号」から育成されたアズキの品種です。
現在も北海道では多く生産されている種類のアズキです。
・北海道産【ほくと大納言】
昭和58年に北海道立十勝農業試験場で「ベニダイナゴン」と「十育80号」から育成されたアズキの品種です。
・北海道産【とよみ大納言】
平成4年に北海道立十勝農業試験場で「92089(F6)」と「十系564号」から育成されたアズキの品種です。
大納言といえば俵型をイメージしますが、とよみ大納言はコロンと丸みを帯びたかわいらしい形をしています。
・兵庫産【丹羽大納言】
兵庫県丹波市春日町東中は、丹波大納言小豆の発祥の地と伝えられています。丹波栗、丹波黒豆とともに、丹波三宝のひとつとして有名です。
古くから兵庫・京都の丹波地方で作られ、小豆の最高級品種として京菓子の材料に使われてきました。
俵型で鮮やかな濃赤色が特徴で、あんこにすれば、ほろりとした食感で、ふくよかな豆そのものの味わいを愉しめます。
大納言小豆で「粒あん」のつくり方
粒あんのつくり方は、鍋で作る以外にも圧力鍋や炊飯器でも作れます。
そのままあんことしても食べられ、水分量を調節すると、おしるこやぜんざい、おはぎにも応用できます。また、残ったら冷凍保存もできるので覚えておくと便利です。
粒あんのつくり方をみてみましょう。
鍋での茹で方
・大納言小豆 250g
・砂糖 160~200g
・塩 ひとつまみ
1.小豆を軽く洗い鍋に入れ、水1200㎖を入れたら加熱する
2.沸騰したら1度お湯を捨て、再び1200㎖の水を入れとろ火で煮る
3.1時間くらい煮込んで豆が柔らかくなったら、砂糖160gを10分おきに2、3回に分けて入れる(あまりかきまぜない)
4.煮ている途中で水が減ってきたら指し水をする(常に豆が煮水につかってる状態にする)
5.砂糖を入れ終えたらかき混ぜる
6.味見して甘さが足りないようであれば砂糖を少しずつ足して調整する
7.塩をひとつまみ入れる
8.かき混ぜながらお好みの水分量になるまで煮詰める
◆鍋で煮るときは、じっくりコトコト煮込むのがポイントです。
◆沸騰したら一度お湯を捨てることで、アクが取れてまろやかに仕上がります。
◆仕上がりは豆の品種によっても変わるため、指で潰してみて、やわらかくなったか確認してから砂糖を入れるようにしましょう。
圧力鍋での煮方
・大納言小豆 250g
・砂糖 150g
・塩 ひとつまみ
1.小豆を洗ったらザルに上げて水を切る
2.鍋に小豆と浸るくらいの水を入れ、圧を掛けずに10分煮る
3.茹で汁を捨てて流水で小豆を洗う(灰汁抜き)
4.鍋に小豆を戻して水1250㎖を加えてきっちり蓋をし、沸騰したら弱火にして10分加圧する
5.火を消したら自然に圧が下がるまで放置する
6.圧が下がったら蓋を取って中火にかけ、砂糖・塩を加えて煮詰めていく
7.ある程度煮詰まったら弱火にする(ときどき底から混ぜる)
8.あとは好みの固さの少し手前くらいまで煮詰めればできあがり
◆豆の食感が楽しめる程度の固さです。お好みで加圧時間を調整してください。
◆あんこは冷めると固くなるので、好みの固さの少し手前で火から降ろしてください。
炊飯器での炊き方
・大納言小豆 150g
・砂糖 100g
・塩 ひとつまみ
1.洗った小豆を炊飯器に入れ、水600㎖を加えて白米モードで炊く
2.炊きあがったら、砂糖、塩と水150㎖を加え再び炊く
3.30分くらいで様子を見て、お好みの固さで保温に切り替える
4.水分が多い時は保温状態にして煮詰める
5.お好みの水分になったら保存容器に取り出す
◆炊飯器でほったらかしでもできるラクチンあんこです♪
◆かき混ぜないので崩れる心配もなくふっくらしあがります。
◆炊飯器によって炊き加減が変わりますので様子を見ながら作ってみてください。
◆ご使用の炊飯器によってはお作りいただけないこともありますので、説明書をご確認ください。
大納言小豆のレシピ
大納言小豆は大粒で皮が丈夫なのを活かして、ぜんざいやおしるこ、粒あん、お赤飯などに向いています。
ちなみに、
関東では、小豆あんの汁物全般を‘’おしるこ‘’と呼びます。また、お餅や白玉などの上に汁気のない餡を添えたものを‘’ぜんざい‘’と呼びます。
関西では、こしあんを水と砂糖でのばして煮詰めたものを‘’おしるこ‘’と呼び、そのおしるこを粒あんに替えたものを‘’ぜんざい‘’と呼びます。つまり、つぶあんを‘’ぜんざい‘’と呼び、こしあんを‘’おしるこ‘’と呼びます。
また、九州の一部の地域では餅が入っているものを‘’おしるこ‘’、白玉団子が入っているものは‘’ぜんざい‘’と呼び、その逆の場合もあります。
このように地域によって呼び方はさまざまなのですが、先に紹介した粒あんを作っておくと、応用がきいて便利です。
炊飯器で作るお赤飯
・大納言小豆 50g
・もち米 1.5合
・白米 0.5合
・水 1000㎖
・黒いりごま 大さじ1
・塩 小さじ1/2
1.小豆を洗い、水500㎖と鍋に入れ中火にかける
2.煮立ったらザルにあげて煮水を捨てる
3.小豆を鍋に戻し水500㎖を入れ中火にかけ煮立ったら弱火にして20分くらい、かために茹でる
4.ボウルとザルを重ねておき、ゆで汁ごとあげ、ゆで汁と小豆をわけて冷ます
5.もち米と白米を混ぜ、洗って炊飯器に入れ、冷ましたゆで汁と塩を加える、「おこわ」の2号の目盛りの少し上まで水を追加する
6.小豆をのせ、「炊込み」モードで炊く
7.きあがったら全体をそっと混ぜ、器に盛り、黒ごまをふる
炊飯器で作る簡単お赤飯のできあがりです。
お祝いの席などに♪
おこわの目盛りがない場合は、ゆで汁+水で250mlを目安にしてください。
おはぎ
・手作りした粒あん
・もち米 1合
1.もち米は洗って水を切っておく
2.炊飯器にもち米と1合分の水を入れ炊く
3.炊きあがったらスリコギなどで米を半殺し(ごはんのつぶつぶが残る程度に潰す)にして、お好みの大きさに丸める
4.あんこを手のひら位のサイズに平たくのばし、丸めたもち米をのせて包む(サラシなどを使って包むと綺麗に仕上がる)
5.包み終わりを下にして器にのせる
お彼岸や普段のおやつに♪
手作りあんこがあると手軽に作れておすすめです。
あんこの固さが柔らかすぎると流れてしまい綺麗に包めないので、あんこは少し固めがいいです。
ぜんざい・おしるこ
・手作り粒あん
・白玉または焼いたお餅 お好み量
お餅に手作りの粒あんをかけて「ぜんざい」に。
水分多めに作った粒あんをかけて「おしるこ」に。
まとめ
小豆の中でも大粒で煮崩れしにくいことから、最高級品とされている大納言小豆は、ふっくらとして色つやがよく風味豊かなので、粒あんやぜんざい、おしるこなどの和菓子やお赤飯などに向いています。
炊飯器などで簡単に炊け、手軽につくることができます。
栄養豊富で大粒の大納言小豆をぜひお試しください。